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岡山地方裁判所 昭和43年(行ウ)11号 判決

岡山県倉敷市水島東千鳥町二番三七号

原告

株式会社乗本組

右代表者代表取締役

乗本格次

右訴訟代理人弁護士

三宅為一

岡山県倉敷市幸町二番三七号

被告

倉敷税務所長

多田慶二

右指定代理人検事

大道友彦

広島法務局訟務部第一課長

岡本常雄

広島法務局訟務部第二課長

井上正雄

岡山地方法務局訟務課長

門阪宗遠

大蔵事務官 島津巌

大蔵事務官 三坂節男

右当事者間の昭和四三年(行ウ)第一一号法人税更正処分並びに審査決定取消請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

1. 原告の請求をいずれも棄却する。

2. 訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1. 被告が原告に対し昭和四二年一二月八日付でなした原告の昭和三九年四月一日から昭和四〇年三月三一日までの事業年度の所得金額二二九万五三三〇円法人税額七五万一七〇〇円とした更正処分のうち所得金額五九万五三三〇円、法人税額一九万〇七〇〇円を超える部分および重加算税一九万八六〇〇円の賦課決定処分をいずれも取消す。

2. 被告が原告に対し昭和四二年一二月一二日付でなした原告の昭和四〇年一二月分の源泉徴収所得税五九万五二〇〇円の納税告知処分のうち六万二〇〇〇円を超える部分および不納付加算税五万九五〇〇円の納税告知処分のうち六二〇〇円を超える部分をいずれも取消す。

3. 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨の判決

第二当事者の主張

一  請求原因

1. 原告は土木建築等の建設業を営む株式会社であるが、昭和四〇年五月三一日原告会社の昭和三九年四月一日から昭和四〇年三月三一日までの事業年度(以下本件事業年度という)について所得金額二八万七六三一円法人税額八万九三三〇円とする確定申告書を被告に提出したところ、被告は原告会社に対し昭和四二年一二月八日付で所得金額二二九万五三三〇円法人税額七五万一七〇〇円とする更正処分および重加算税一九万八六〇〇円の賦課決定処分をなし、その旨原告会社に通知した。

2. さらに被告は原告会社に対し同年一二月一二日付で昭和四〇年一二月分の源泉徴収所得税五九万五二〇〇円の納税告知処分および不納付加算税五万九五〇〇円の納税告知処分をなし、その旨原告会社に通知した。

3. しかし原告会社は1項の法人税更正処分のうち所得金額五九万五三三〇円法人税額一九万〇八二〇円を超える部分および重加算税賦課決定処分ならびに2項の源泉徴収所得税納税告知処分のうち六万二〇〇〇円を超える部分および不納付加算税納税告知処分のうち六二〇〇円を超える部分につき不服なので、昭和四三年一月四日被告に対し異議申立をなしたが、被告は同年三月二九日法人税更正処分および重加算税賦課決定処分につきこれを棄却する旨の決定をなし、その旨原告会社に通知したので、原告会社は同年四月六日さらに広島国税局長に対し審査請求をなし、源泉徴収所得税納税告知処分および不納付加算税納税告知処分については同年四月五日広島国税局長に対し審査請求をしたものとみなされ、広島国税局長は同年五月三一日審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をなし、同年六月六日その旨原告会社に通知した。

4. しかし被告のなした前記法人税更正処分および重加算税賦課決定処分ならびに源泉徴収所得税納税告知処分および不納付加算税納税告知処分はいずれも原告会社のなした右不服申立の範囲で(ただし法人税更正処分については法人税額一九万〇七〇〇円を超える範囲で)事実を誤認してなされた違法があるから取消を求める。

二  請求原因に対する答弁

請求原因1項ないし3項の各事実をいずれも認め、同4項を争う。

三  抗弁

1. 被告が原告会社の本件事業年度の法人税について調査したところ、原告会社は同事業年度において石井スエコから別表一の被告主張欄記載のとおり旧家屋撤去工事を含めたアパート新築工事を総額五二九万五六四七円で請負い、完成のうえ引渡をしたが、右請負代金のうち九万五六四七円を値引したため別表二の被告主張欄記載のとおり差引五二〇万円の支払を受けながらそのうち一七〇万円を帳簿に記載しないで隠ぺいするとともに、右工事収入金以外にも雑収入金三〇万七六九九円がありながらこれも帳簿に記載しないで隠ぺいしたうえ、いずれも同事業年度の所得金額計算にあたつて除外し、確定申告書を提出したことが判明した。

2. そこで被告は右除外工事収入金および雑収入金合計二〇〇万七六九九円を本件事業年度の益金に加算し、別表三のとおり所得金額二二九万五三三〇円、法人税額七五万一七〇〇円および重加算税一九万八六〇〇円を算出した。

3. また原告会社が右所得金額計算にあたつて除外した工事収入金および雑収入金は原告会社が代表者乗本格次を中心とした同族法人であり、同人がこれらの除外収入金の受領を行なつていることから同人が取得したものと認められるので、本件事業年度の決算確定のときをもつて同人に対する賞与として認定した。

4. これに伴い被告は原告会社に対し乗本格次の昭和四〇年分源泉徴収所得税につき別表四のとおり年末調整を行ない、昭和四〇年一二月分の源泉徴収所得税額五九万五二〇〇円および不納付加算税五万九五〇〇円を算出した。

5. 従つて被告のなした法人税更正処分および重加算税賦課決定処分ならびに源泉徴収所得税納税告知処分および不納付加算税納税告知処分はいずれも適法な処分である。

四  抗弁に対する答弁

1. 抗弁1項の事実中旧家屋撤去工事を含めたアパート新築工事の請負代金総額が五二九万五六四七円であるとの点、右請負代金のうち九万五六四七円を値引したため差引支払を受けた金額が五二〇万円であるとの点およびそのうち一七〇万円を帳簿に記載しないで隠ぺいしたとの点を否認し、その余を認める。

旧家屋撤去工事を含めたアパート新築工事の請負代金総額は別表一の原告主張欄記載のとおり五〇九万五六四七円であり、完成引渡が約定期限より約六ケ月遅延したのに対し石井スエコから損害賠償を請求されて値引したため、原告会社が差引支払を受けた金額は別表二の原告主張欄記載のとおり三五〇万円である。

2. 同2項の事実中別表三については、原告会社申告分の所得金額二八万七六三一円、法人税額八万九三三〇円、雑収入金除外三〇万七六九九円、控除税額五五七三円を認め、工事収入金除外一七〇万円を否認する。

3. 同3項の事実中原告会社の代表者乗本格次が除外工事収入金を取得したとの点を否認し、同人が除外雑収入金三〇万七六九九円を取得したとの点を認める。

4. 同4項の事実中、別表四の原告会社源泉徴収分の給与所得金額一〇二万円、所得税額七万二二〇〇円、雑収入金除外による認定賞与分の給与所得金学三〇万七六九九円、諸控除額三三万一四〇六円を認め、工事収入金除外による認定賞与分の所得金額一七〇万円を否認する。

第三証拠

一  原告

1. 甲第一、二号証の各一、二、第三号証、第四号証の一ないし四、第五号証の一、二、第六号証の一ないし三、第七号証、第八号証の一、二、第九、一〇号証、第一一号証の一、二を提出し、証人石井スエコの証言および原告代表者本人尋問の結果を援用した。

2. 乙第一ないし第三号証、第八号証の成立はいずれも不知、その余の乙号各証の成立はいずれも認めると述べた。

二  被告

1. 乙第一ないし第三号証、第四号証の一ないし三、第五号証の一ないし六、第六号証の一ないし三、第七、八号証を提出し、証人石井スエコ、同高田祐一の各証言を援用した。

2. 甲第七号証については工事請負契約書部分の成立を認め、その余の部分の成立を否認する、その余の甲号各証の成立をいずれも認めると述べた。

理由

一  請求原因1項ないし3項の各事実はいずれも当事者間に争いがない。なお、原告は法人税更生処分については不服申立をした範囲を超えてその取消を求めているが、弁論の全趣旨によると原告は不服申立に際しその自認する法人税額の計算を誤りそれに基づいて不服申立をしたことが明らかであるし、異議決定庁および審査庁は、原処分を、不服申立をした者の不利益に変更することはさておき、申立の範囲に拘束されることなく独自の調査決定権を有するものと解しうるので、右更正処分のうち不服申立の対象としなかつた部分に関する取消訴訟が不服申立を前置せず不適法として却下すべきものとはいえない。

二  抗弁について準次検討する。

1. 抗弁1項の事実中旧家屋撤去工事を含めたアパート新築工事の請負代金総額が五二九万五六四七円であるとの点、右請負代金のうち九万五六四七円を値引したため差引支払を受けた金額が五二〇万円であるとの点および原告がそのうち一七〇万円を帳簿に記載しないで隠ぺいしたとの点を除きその余の事実は当事者間に争いがない。

そこで右請負代金額およびそのうち値引したため差引支払を受けた金額について検討し、原告会社の工事収入金除外事実の有無を明らかにする。

成立に争いない甲第二号証の一、二、第三号証、第四号証の一ないし四、第五号証の一、二、第六号証の一ないし三、工事請負契約書部分につき成立に争いなく、その余の部分につき原告代表者本人尋問の結果によつて成立を認める甲第七号証成立に争いない甲第八号証の一、二、第九、一〇号証、証人石井スエコ、同高田祐一の各証言によつて成立を認める乙第一号証(後記認定に反する部分を除く)、証人高田祐一の証言によつて成立を認める乙第二、三号証、成立に争いない乙第四号証の一ないし三、第五号証の一ないし六、第六号証の一ないし三、第七号証、証人石井スエコ、同高田祐一の各証言および原告代表者本人尋問の結果(後記認定に反する部分を除く)ならびに弁論の全趣旨を総合すると、次の各事実を認めることができる。

(1)  原告会社は石井スエコから旧家屋撤去工事を含めたアパート新築工事を、昭和三八年八月一二日当初工事、昭和三九年一月九日二口の変更追加工事、同年二月二六日ガス設備等工事の四回に分け、それぞれ三五五万円、八〇万円、五〇万円、二四万五六四七円総額五〇九万五六四七円で請負つたが、請負にあたつて原告会社のした見積金額は当初工事が三六九万円、二口の変更追加工事が八八万八〇〇〇円と六三万三二〇〇円であり、当初工事の見積金額のうちには旧家屋撤去工事費一六万一〇〇〇円が含まれていた。

(2)  しかし原告会社が昭和三八年八月一二日当初工事を請負い、旧家屋撤去工事に着手したところ、旧家屋の隣接地に建物が密集しており、しかも旧家屋に使用されている古材をアパートの新築用材として使用する約束であつたため、その取りこわしに特殊な機械を使用する必要を生じ、前記見積金額の範囲内ではおさまらなくなつたため原告会社は石井スエコから請負代金額五〇九万五六四七円とは別途に二〇万円の支払を受けることを約束した。

(3)  そして工事請負契約では代金支払時期はつぎのように定められていた。すなわち当初工事にあつては契約時に五〇万円、上棟時に一〇〇万円、完成時に二〇五万円を、八〇万円の変更追加工事にあつては契約時に四〇万円、完成時に四〇万円を、五〇万円の変更追加工事にあつては契約時に二五万円、完成時に二五万円をそれぞれ支払うことと定められていたが、原告会社は昭和三八年八月一二日に五〇万円、同年八月下旬頃二〇万円、同年一一月一日に一〇〇万円、昭和三九年二月一五日に一〇〇万円、同年六月二六日に一〇〇万円、同年七月一日頃に一五〇万円計五回にわたつて総額五二〇万円の支払を受け、残額九万五六四七円については石井スエコに要請されて値引した。石井スエコは右請負代金のうち昭和三八年八月一二日に支払つた五〇万円と同年八月下旬頃に支払つた二〇万円については香川興産に土地を売却したのに伴つて受領した手付金二〇〇万円のうちからこれを支払い、同年一一月一日に支払つた一〇〇万円と昭和三九年二月一五日に支払つた一〇〇万円については香川相互銀行倉敷支店の夫石井博名義の普通預金口座から引き出した二五〇万円と二〇〇万円のうちからこれを支払い、同年六月二六日に支払つた一〇〇万円と同年七月一日頃支払つた一五〇万円については中国銀行倉敷駅前支店の石井スエコ名義の普通預金口座から三回に分けて引き出した二五〇万円をその支払にあてた。

(4)  結局原告会社は旧家屋撤去工事を含めたアパート新築工事を総額五二九万五六四七円で請負い、そのうち五二〇万円の支払を受けたが、これらの請負契約の締結、請負代金の授受はいずれも原告会社の代表者乗本格次と石井スエコとの間で行なわれ、昭和三八年八月一二日に請負つた当初工事、昭和三九年一月九日に請負つた二口の変更追加工事については工事請負契約書が作成され、代金の授受にあたつてもすべて代表者乗本格次から石井スエコに領収証が交付された。

以上のとおり認められ、前掲乙第一号証および原告代表者本人尋問の結果中右認定に反する部分殊に原告会社が請負代金五〇九万五六四七円のほかに前記認定の旧家屋の取り壊しのため二〇万円の支払を受けた事実はないと述べる部分および右請負代金のうち一五九万五六四七円は工事の完成引渡が約六ケ月遅延したことを理由に石井スエコから値引を強要されてそれを応諾しその支払を受けていないと述べる部分はつぎに述べる理由からたやすく措信することができず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

すなわち

イ  前掲甲第九、一〇号証、乙第六号証の一ないし三、証人高田祐一の証言を総合すると、原告会社が本件アパート新築工事に要した経費は四二〇万円を超えていたことが認められる(原告代表者本人尋問の結果中右認定に反する部分は前掲各証拠と対比してたやすく措信することができず、他に右認定に反する証拠はない)。したがつて原告代表者本人の述べるように原告会社が本件工事を五〇九万五六四七円で請負い、一五九万五六四七円を値引したのであれば、原告会社は本件アパート新築工事によつて七〇万円を超える損失を被つたこととなる。

ロ  また前掲甲第七号証、第八号証の一、二、乙第一、七号証、証人石井スエコ、同高田祐一の各証言を総合すると、アパート新築工事の完成引渡時期は工事請負契約書でいずれも着手の日(契約の日から五日以内)から九〇日以内と約定されていたが、完成引渡が遅れ、全部の完成引渡がなされたのは昭和三九年六月下旬頃であつたが、本件アパートの入居は完成前の同年二月頃から行なわれ、石井スエコは同年一月二五日以降毎月家賃の支払を受けていた、他方本件請負契約では工事の完成引渡の遅延に対しては一日につき請負代金額の一〇〇〇分の一の割合による違約金を支払うべく、部分的に完成引渡がなされたときはその部分に対する工事費相当額を減じた額を基準として算出することとされていたことが認められ(原告代表者本人尋問の結果中右認定に反する部分は前掲各証拠と対比してたやすく措信することができず、他に右認定に反する証拠はない)、右違約金条項に従つて算出すれば原告会社が石井スエコに対し工事の完成引渡の遅延に伴い支払うべき金額は部分的に完成引渡したことによる減額を考慮せず最大限に支払うこととしても九四万円程度となるにすぎないことが計算上明らかであるが、原告代表者本人の述べる値引額はこれに比して著しく過大である。

ハ  さらに原告代表者本人尋問の結果によると原告会社がこれまで本件アパート新築工事におけるような大きな値引をしたことはなく(他に右認定に反する証拠はない)、しかも原告代表者本人は、一五九万五六四七円にも及び大幅な値引をするに至つた経緯について、石井スエコが請負代金を二五〇万円まで支払つた段階で残る二五〇万円のうち一〇〇万円しか支払わないと主張したためやむなく一五〇万円を値引するに至つたと述べるのであるが、このために代表者乗本格次と石井スエコとの間で請負代金の支払をめぐつて紛糾するといつた事態を招いたことを認めるに足りる証拠はなく、かえつて前掲乙第一、七号証、証人石井スエコ、同高田祐一の各証言および原告代表者本人尋問の結果を総合すると、原告会社が石井スエコからアパート新築工事を請負うに至つたのは同女の夫石井博の友人で代表者乗本格次の義兄にあたる沢根清の紹介があつたためであるが、代表者乗本格次が本件請負代金の取立について同人に斡旋仲介を依頼するといつたこともなく、かえつて当事者間で円満に請負代金の決済が行なわれたことが認められる(他に右認定を左右するに足りる証拠はない)。

ニ  前掲乙御一号証、証人石井スエコ、同高田祐一の各証言および原告代表者本人尋問の結果(後記認定に反する部分を除く)ならびに弁論の全趣旨を総合すると、前記認定のとおり石井スエコは代表者乗本格次から請負代金全額に対する領収証の交付を受けたものであるが、その後本件アパートの新築につき事業用資産の買換えの場合における譲渡所得の計算に関する特例の適用を受けるためこれを被告に呈示し、被告もその際右領収証を確認したことが認められる(原告代表者本人尋問の結果中右認定に反する部分は前掲各証拠と対比してたやすく措信することができず、他に右認定に反する証拠はない)。

ホ  原告代表者本人が述べるように原告会社が工事代金のうち一五九万五六四七円を値引したのであれば帳簿にその旨記載すべきであり、またそうした記帳処理をなすことに何ら不都合はないと思われるのに、前掲乙第四号証の一ないし三、証人高田祐一の証言および原告代表者本人尋問の結果によると、原告会社は昭和三九年度売上帳の貸方勘定欄に「支給木材一五〇万円、値引九万五六四七円」と記載しているにすぎないことが認められる(他に右認定に反する証拠はない)。

以上の次第で、原告会社は石井スエコより本件アパート新築工事を総額五二九万五六四七円で請負い、そのうち五二〇万円の支払を受けながら、三五〇万円のみ支払を受けたと主張し、残額一七〇万円の工事収入金を帳簿に記載せず隠ぺいしていることが明らかである。

2 抗弁2項の事実中別表三の原告会社申告分の所得金額二八万七六三一円、法人税額八万九三三〇円、雑収入金除外三〇万七六九九円、控除税額五五七三円は当事者間に争いがなく、申告所得金額二八万七六三一円に雑収入金除外三〇万七六九九円および前記認定の工事収入金除外一七〇万円合計二〇〇万七六九九円を加算すると本件事業年度の所得金額は二二九万五三三〇円となることが計算上明らかであり、昭和四〇年法律三四号による改正前の法人税法(一七条一項一号)、昭和四二年法律一四号による改正後の国税通則法(六八条一項)の規定に従い本件事業年度の法人税額、重加算税額を算出するとそれぞれ七五万一七〇〇円、一九万八六〇〇円となることが計算上明らかである。

3 抗弁3項の事実中除外雑収入金三〇万七六九九円を代表者乗本格次が取得したことは当事者間に争いがなく、原告会社が同人を中心とした同族法人であることは原告において明らかに争わないからこれを自白したものとみなし、右事実に前記認定のとおり本件請負代金の受領はすべて代表者乗本格次がなしたものであるが、原告会社は除外工事収入金一七〇万円を本件事業年度の決算に収入金として計上せず、これらの事実を勘案するならば、前記一七〇万円は同人において取得したと推認するのが相当である。

従つていずれも本件事業年度の決算確定のときをもつて代表者乗本格次に対する賞与と認定すべきである。

4 抗弁4項の事実中別表四の原告会社源泉徴収分の給与所得金額一〇二万円、所得税額七万二二〇〇円、雑収入金除外による認定賞与分の給与所得金額三〇万七六九九円、諸控除額三三万一四〇六円は当事者間に争いがなく、原告会社源泉徴収分の給与所得金額に雑収入金除外による認定賞与分の給与所得金額三〇万七六九九円および前記認定の工事収入金除外による認定賞与分の所得金額一七〇万円合計二〇〇万七六九九円を加算し、昭和四〇年法律三三号による改正後の所得税法(一九〇条、付則四条)、前記改正国税通則法(六七条)の規定に従い昭和四〇年一二月分の源泉徴収所得税額および不納付加算税額を算出するとそれぞれ五九万五二〇〇円、五万九五〇〇円となることが計算上明らかである。

三  以上の次第で被告のなした法人税更正処分および重加算税賦課決定処分ならびに源泉徴収所得税納税告知処分および不納付加算税納税告知処分はいずれも適法な処分であり、原告の請求はいずれも失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中原恒雄 裁判官 松尾政行 裁判官 渡辺温)

別表一

〈省略〉

別表二

〈省略〉

別表三

〈省略〉

別表四

〈省略〉

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